初戀
作者名 |
島崎藤村 (1872-1943) |
作品名 |
初戀 |
制作年代 |
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収載書名 |
若菜集 |
刊行年代 |
1897 |
その他 |
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まだあげ初(そ)めし前髮(まへがみ)の
林檎のもとに見えしとき
前にさしたる花櫛(はなぐし)の
花ある君と思ひけり
やさしく白き手をのべて
林檎をわれにあたへしは
薄紅(うすくれない)の秋の實(み)に
人こひ初(そ)めしはじめなり
わがこころなきためいきの
その髮の毛にかゝるとき
たのしき戀の盃(さかづき)を
君が情(なさけ)に酌みしかな
林檎畠の樹(こ)の下に
おのづからなる細道(ほそみち)は
誰(た)が踏みそめしかたみぞと
問ひたまふこそこひしけれ
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